2025.04.15

TIMEXデザイナー、ジョルジオ・ガリ氏の名を冠した
最高峰シリーズは……珠玉のシルバー・ミルフィーユ!?

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」。TW2Y27500。自動巻き。径38㎜。チタンケース。チタンブレスレット。パワーリザーブ約41時間。5気圧防水。世界限定500本。34万3200円。

“アメリカの国民時計”タイメックス・グループのクリエイティブディレクターを務めるレジェンド、ジョルジオ・ガリ氏の名を冠したSシリーズに、チタンケースの最新作「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」が登場! 34万円台というタイメックス史上最高値がつけられたその腕時計は、ミニマルを極めたルックスでありながら、見る者を惹きつけてやまないオーラに満ちている。日本での発売に先立って、時計Begin編集部はガリ氏本人へのインタビューに成功。意匠の1つ1つに込めた、熱い思いを訊いた。

ジョルジオ・ガリ [Giorgio Galli]
1962年、イタリア生まれ。ルーカス・フィルムを経てデザイナーへ転身。90年代前半にスウォッチデザインラボ所長を務め、その人気に寄与した。現在はクリエイティブディレクターとしてタイメックス・グループのデザインを統括する。

「自身の名前を冠したSシリーズでは、私の時計デザイナーとしてのキャリア、生きてきた証を表現しました」。ジョルジオ・ガリ氏がそう語るSシリーズの最新作にして最終作でもある「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」は、チタンケースをサファイアクリスタル製のドーム風防が覆う、ベゼルレスのデザインが印象的だ。どこかスペーシーな浮遊感が漂うそのデザインにも、ガリ氏の人生の軌跡が反映されているという。意匠の1つ1つに込めた思いを、本人の言葉を借りながら順に解き明かしていこう。

只者じゃないオーラ、目をひくミニマルデザイン。
そのカギは「ベゼルレス」、そして「ケースデザイン」にある!

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」には、高級時計シーンでもトレンドの1つに挙げられる「ベゼルレス」デザインが採用されている。チタンケースの際まで覆うドーム風防の膨らみ、ラグから連なるその丸みを帯びたフォルムは、まるで宇宙船のよう。このデザインにはインスピレーション源があるとガリ氏はいう。

「私は1962年の生まれなのですが、同じ年に放映が始まったカートゥーンの番組に『宇宙家族ジェッドソンズ』という宇宙を舞台にしたアニメがあったんです。私は幼少期にそれを観て、未来はこんな風になっているのかと憧れを持ちました。『S2 Ti』のフォルムは、まさしくジェッドソンズで観た宇宙船のイメージです」。

無反射加工を施したサファイアクリスタル製のドーム風防は、ベゼルレスのデザインによって最大限に面積がとられ、あらゆる角度からの光をやわらかく反射する。ジョルジオ・ガリがこの時計で表現したかった最大のポイントが、美しい「光」なのだ。

ちなみにベゼルレスデザインはタイメックスの自動巻き時計「マーリン ジェット」にも採用されているのだが、こちらは風防が柔らかなアクリル製。「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」の風防は硬質なサファイアクリスタル製のため、「機密性を保ちながらケースと接着するのが技術的に難しく、5気圧防水を実現するために極めて精度の高い設計が求められました」というのは裏話だ。

ケースサイドに施した肉抜きの意匠は、1996年にジョルジオ・ガリ氏が世界に先駆けて「ノーチカ」の時計デザインに採用したもの。昨今、さまざまなブランドで同様の意匠が見られるが、「オリジンは私」とガリ氏は胸を張る。肉抜きされたサイドから鍛造カーボンファイバー製のミッドケースが覗き、印象を締めるアクセントとして効いているのも今作の大きな特徴である。

また、肉抜き加工はブレスレットのサイドにも施され、ケースとの一体感をもたらしている。「時計デザインで大切なのは、調和」というのはジョルジオ・ガリ氏が常々いう言葉だが、まさしくありとあらゆる要素が「調和」することで生まれる美しさが、この時計にはある。

チタン独特の色合い、柔らかさ、温かさをデザインに落とし込む。
グレーのグラデーションの妙がスゴイ!

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」は、ケースもブレスレットもチタン製。軽さを追求してのことだが、文字盤やインナーリング、時分秒針にまでチタンが用いられているのも大きな特徴である。パーツはそれぞれサテンやポリッシュ加工、またはその併用によって異なる表情に仕上げられ、光の陰影が表情へ奥行きを与えている。さながら、グレーのミルフィーユ。「光の当たり方によって移ろう表情を楽しんでいただきたく、デザインに苦心しました」とはガリ氏の談だ。

アワートラックとして刻まれたインナーリングの溝をご覧いただきたい。サテン仕上げのインナーリングに対して、リングのサイドエッジおよびアワートラックの溝にはポリッシュ仕上げがなされているのがわかるだろう。こうした細やかな仕事が、一目で見る者を引き込む美しい光の陰影を生むのである。

ちなみに一口にチタンといってもさまざまなタイプと色みがあり、ガリ氏がセレクトしたのは「グレード2」というタイプ。より高価なグレード5やグレード4といったチタンも検討のテーブルに上がったが、タイメックスブランドとしてのあるべき価格設定、そしてグレード2の“Verry Soft”かつ“Warm”な色みがとどめを指し、これに決めたのだそうだ。

タイメックス史上最高額となる上質な機械式モデル。
ベルトも最新の調整機能を採用。

 

タイメックスの最上位モデルに位置する「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」は、心臓部に28,800振動/時、約41時間のパワーリザーブを誇るスイス製自動巻きムーブメント「セリタSW200-1」を搭載。ケースバックのサファイアガラスからは、カスタムされたブラックIP仕上げのローターをはじめ各種のパーツが覗き、その精密な動作を眺めることができる。

そしてもう1つ、機構面でのトピックが、工具なしでブレスレットのコマの着脱ができる「I-Size®(アイサイズ)」システムの搭載である。製品としては世界で初めて搭載されるこの機構を用いれば、自身で簡単に150mm〜205mmまでの腕周りサイズの調整が可能。コマを外す操作もコマを引っ張って回すだけと「じつにシンプルでイージー」だ。
こうしたユーザーフレンドリーな設計にも、ジョルジオ・ガリという人間のパーソナルなマインドが表れているように思う。

ジョルジオ・ガリ氏本人が語るS2 Tiの手応え、これから。

 

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」について、その意匠に込めたさまざまな思いをうかがってきたが、ガリ氏は実際に身に着けたユーザーの声に「デザイナーとしての自信を深めた」と笑顔を見せる。

「アメリカでは日本より一足早く発売したのですが、購入してくださったユーザーの方から“写真で見るよりも実物のほうが美しい”という声をいただき、嬉しい気持ちでいっぱいです。ブランドロゴやステータスではなく、美しいと感じて私の時計を選んでいただける。デザイナーにとって、こんなに光栄なことはありません」。

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」のプロトタイプが完成したのは、じつは2年前のこと。ムーブメントの確保や生産技術の確立に時間を要し今般の発売となったのだが、デザイナーのジョルジオ・ガリ氏は2年間にわたりプロトタイプを着用し、「日々身に着けることで愛着がより深まった」という。

「ケースもブレスレットもチタン製なので非常に軽い。快適さが身に染みてわかるんです。細部まで丁寧に作り込まれた時計は、時間が経つにつれて新鮮な気づきを与えてくれることがあります。そしてそれは、長く愛用したいという思いへ繋がる。この時計が皆さんにとって、いつまでも気づきを与えられる存在であることを願っています」。

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」は、世界限定500本生産。日本での販売は10~20本程度と限られた本数しか手配できないのは残念だが、幸運にも手に入れられた方には何物にも代え難い喜びを与えてくれることだろう。

「タイメックスというブランドの魅力は、レガシーにあると私は考えています。仮に私がタイメックスのデザイナーをやめたとしても、この時計が1つのレガシーとなって今後に受け継がれてくれたら嬉しいですね」とガリ氏。ちなみに「現在はまた別のプロジェクトに取り組んでいて、今年の7月には発表できると思います」とのこと。レジェンドデザイナーが心血を注ぐ新しいプロジェクトにも、多いに期待を寄せたい。

「ジョルジオ・ガリ S2 Ti」の販売は
TIMEXオンラインストア https://www.timexwatch.jp/
オンタイム渋谷ロフト店内 TIMEX Shibuya Base https://www.ontime-move.watch/stores/

お問い合わせ/ウエニ貿易☎03-5815-3277

文/秦 大輔